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タイトル 高齢者と薬 
コメント 高齢者では腎臓機能・肝臓機能が低下しています

 高齢者の薬


 お薬の効きすぎや副作用の発現は特に高齢者の方に多くなりがちです。スライドのグラフ(「高齢者に出やすい薬の副作用」)をご覧下さい。年齢の高齢化とともに副作用の出現率が高くなっているのがわかります。60 歳代から70、80 歳代と高齢になるにしたがって約10 パーセント程度高くなっています。


 高齢者の方は例えば高血圧と心臓病、糖尿病といったようにいくつもの病気を合わせ持っていることが多く、服用する薬の種類も
おのずと多くなる傾向にあります。
①多種類の薬を長期に服用していること
②臓器の老化で薬が体内に残りやすい
 高齢者の副作用発現は①~②が大きな要因となります。
外国での資料(データ)ですが、服用している薬の種類と副作用の発生率を示したグラフがあります。薬の種類が5種類、10 種
類と増えるに従って、それに比例して副作用の発生率が上昇していることがおわかりになられると思います。
年齢とともに何らかの病気をお持ちの方の場合、お薬が増えることがあっても少なくなることは少ないと思います。「最近、目も悪

くて白内障の目薬も眼圧を下げる緑内障の目薬も使うようになった。」というような話  は日常的な会話となっている場合もあるのではないでしょうか?
 さて②の「臓器の老化で薬が体内に残りやすい」ということを少しご説明させていただきます。
口から入ったお薬がどのようにして全身に行き渡り排泄されのでしょうか?
 口から入った薬は小腸から主に吸収され血液を介して全身に運ばれます。そして薬が作用する部位、胃薬ならば胃や十二指腸、心臓の薬ならば心臓にといったように目的とする場所で作用します。
全身を薬がめぐる時、薬は肝臓を経由してその一部は分解されて無毒化されます。全身をめぐって役割を果たした薬は腎臓を経由して尿へと排泄されます。出来るだけ水に溶けやすい形に変換されて排泄されます。
 高齢者の場合、腎臓や肝臓の機能が一般に低下しています。80 歳近くになるとかなり機能が低下しいるのがグラフからわかります。
どうして肝臓や腎臓の機能が低下すると副作用が出やすくなるのでしょうか?
肝臓は薬を代謝して主に無毒な形にする作用を持っています。従ってこの機能が低下すると解毒機能が弱くなり薬の副作用も出やす
くなるわけです。
お薬を長期に飲んでいる方では肝臓を悪くすることがあります。このことと密接に関係のあることなのです。食べ物でも薬でも肝臓
で代謝を受けます。お薬を飲んで肝臓を悪くすることが多いのはお薬が肝臓で大いに代謝を受けている為に肝臓がフル回転しているからです。アルコールを飲み過ぎると肝臓を悪くするのと同じ理屈です。
腎臓は不要物を排泄する作用を持っています。お薬も役割を終えていらない不要物になった時には腎臓から尿へと排泄されます。ところが腎臓の機能が低下して不要なお薬が排泄されずに体内に残り血液中に残ってしまうとお薬が長時間体内に残り副作用が生じやすくなります。つまり薬が効きすぎるという現象が生じます。
 グラフをご覧下さい。

   

 同じお薬を飲んでも若い方と高齢者では血液中の薬の濃度がこんなにも違います。具体例でいいますと、睡眠を改善する(短時間型睡眠導入剤)ハルシオンというお薬、お飲みになられている方もいらっしゃると思います。青いきれいな楕円形の薬で

す。病院では成分濃度が0.125mg と0.25mg というお薬が使用されます。ここでは0.25mg を服用した場合の血液中の濃度推移が示されています。やはり同じお薬を飲んでも濃度にこんなにも違いがあります。もちろん年齢に関係なく肝臓や腎臓の機能に依存していますので若いから皆、同じだとはなりません。若くても機能の衰えている方では高齢者と同じような曲線をとることもあります。

  高齢者の方の場合、特にお薬を服用する場合、副作用の出現には気をつかう必要があるかと思います。医療機関で受診されている場合は、定期的な血液検査等で肝機能や腎機能の機能のチェックは日頃からなされていますので、何か問題があれば医療機関で指示されると思います。
 お薬を飲み忘れたから2回分を一度に服用するとか友達にいただいた睡眠剤を服用したり血圧や心臓の薬を他人にお渡ししたりなどくれぐれもされないようにして下さい。人からいただいた薬で副作用が出る危険性もあります。それはその方の肝臓や腎臓の機能
を考慮に入れた薬の種類や量であるからです。