= 高血圧のお話し ~その1~ = 高血圧程世に知られた病気も少ないと言えます。高血圧とはその名の通り血圧が高い状態で、あまりにありふれた病気である為に、これが循環器疾患の一つであることは意外と知られていません。実際診療の場でも高血圧と診断するのはそれほど難しい事では無く、それは血圧がハッキリした数値で示され、高血圧学会等で『これ以上は高血圧ですよ』と言う基準が決められているからです。つまり高血圧と言う診断をする事は別に循環器科の医師でなくても、何科の医師でも可能な訳です。もっと言えば素人でも高血圧の基準さえ知っていれば家庭用の血圧計で高血圧の診断が可能と言える訳です。 問題はここからです。風邪は万病の元だから気をつけなさいと言う話は聞いた事があると思います。実際風邪をこじらせると肺炎、脳炎、脱水等問題となる事が結構あります。特に高齢者ではこの為入院が必要となったり、死に至る事もあります。 だから風邪をひかない様に日頃からうがいや手洗い等で予防し、もし風邪をひいても早めに治療をすると言うのが世間一般の常識ではないかと思います。しかしたかが風邪と放置している場合も多く見られるのが現状です。まあ風邪の場合は何も治療しなくても自然に治る事も多く、ここが高血圧とは事情が違ってくるのです。高血圧も万病とはいかなくても色々な病気と深く関わっており、予防と早期治療が重要である事は風邪と同じと考えます。しかし始末の悪い事に風邪でれば咳、痰、鼻水等の症状があるのですが、高血圧の場合は殆どの例で症状がありません。何も症状が無ければ血圧を測る事もない訳です。たまにある健康診断で血圧が高いですよと言われても『別にどうも無いですもん』と言う事で終わってしまう事が多い様に思われます。しかし風邪とは違い、高血圧の場合は殆どの例で加齢と共に悪くなっていくのが実情であり、血圧が高いまま放置していた年数とか家系的に高血圧が多い等の影響で色々な合併症を起こしてきます。ここが風邪と全く違う病態なのです。 たかが高血圧と侮ってはいけません。更に高血圧なのです。次回は血圧の正しい測り方と適正な診断についてお話したいと思います。

高血圧のお話し ~その2~ 前回御約束した様に血圧の正しい測り方と血圧の判断の仕方についてお話ししたいと思います。 血圧と言っても、その測定状況によって可也変動します。一日の内でも時間帯によって変動が見られます。運動すれば当然血圧は上昇しますし、興奮しても、緊張しても上昇します。緊張と言えば『家では高くないのに病院へ来ると高いんです。』と言われますが、これは白衣高血圧と呼ばれ、白衣姿を見ると緊張してしまうタイプの人に見られます。変動する事を念頭に置いて少しくらい上がったとか下がったとか騒がない事です。安定した値を得る為に大体一定の時間に測定して日々の変動を評価するべきです。本来は測定前に10分間位横になって安静にしておくべきですが、簡便的には測定する前に前身の力を抜いて5回位深呼吸をすると、人によっては30mmHg位下がります。 皆さん御存知の様に血圧を測った時には上の値と下の値がありますね。腕にマンシェットと言う帯を巻いて、そこに空気を送り込んで腕を締めていくとある値以上は血の流れが止まってしまいます。そこから段々緩めていくと音が聞こえ始める所つまり血が流れ始める所があり、この値が上の血圧つまり収縮期血圧と言います。そこから更に下げていくと再び音が聞こえなくなる所があり、この値が下の血圧つまり拡張期血圧と言います。少し難しい話になりますが、心臓は収縮と拡張を繰り返して全身に綺麗な血液を送り、又全身から汚れた血液を回収しています。つまり心臓は血液のポンプの役目をしています。心臓が収縮して血液を全身に送りだすと動脈に勢い良く血液が流れ込み、その時の血管の圧が収縮期血圧で、心臓が拡張して全身の静脈から血液が戻りますが、その時に動脈の血液も心臓側へ引き戻される為に動脈内の血液量が減って圧が下がります。その時の血管の圧が拡張期血圧と言う訳です。ちょっと難しい話になってしまったでしょうか。
ここで高血圧に話を戻しますが、正常血圧は130/85mmHg以下、高血圧の定義は140/90mmHg以上とされています。その間は境界領域と言う訳です。一般的にこの基準に従って判定されますが、個人個人の性質、特製が違う様に年齢や合併症の有無等で実際に治療する場合は若干前後する事があります。長期間高血圧にさらされると急に血圧を下げる事で頭痛やふらつきを訴える人がいます。又高齢者の場合も考慮が必要です。合併所があればその種類によって無理してでも下げる必要が生じる場合もあります。高血圧と言っても様々です。
高血圧の話し ~その3~
合併症について①
今回から高血圧の合併症についてお話ししたいと思います。結局先の事を考えればこれが一番問題な訳です。
前回でも言いましたが、血圧と言うのはとても変動し易いものだと考えて下さい。一回測って少々高いくらいで騒ぐ事はありません。まず深呼吸を数回して測定し直す。これだけで随分下がる事があります。それでも高ければ別の日に改めて測定し直す。この様に何度か測定して高ければ治療を開始する事になります。ただ初回でも収縮期血圧が200mmHgを超える位高い時は話が違います。この時は早急に何らかの処置が必要な場合があります。又何らかの症状(頭痛、吐き気、めまい、ふらつき、肩凝り等)を伴っている時も早めに治療が必要な事が多いと考えます。
この様に症状を伴っている場合や家族内にすでに高血圧の方がいらっしゃる場合は高血圧に対する認識が一般の方とは違っていると考えられます。一般の人は高血圧と言う病名は知っていても病気に対する認識は殆どありません。発見されるのは殆ど健康診断やたまたま自動血圧計があったので測ってみたところ高かった等の理由で病院を受診するのです。いや受信すれば良い方かも知れません。そのまま放ったらかしにしている事が多いのではないでしょうか。 どうして受信する必要があるのでしょうか? それは合併症は無いか。今後どうしたら良いか。治療は必要か。等を判断してもらう為でしょう。独りよがりはいけません。先ず受診する事です。
お待たせしました。前置きが長くなりました。『早く本題に入れよ』と言う声が聞こえてきそうです。 さて高血圧症の合併症にはどんなものがあるのでしょう。 高血圧は全身の動脈に影響を与えます。その結果、脳(高血圧性脳症、脳出血、脳梗塞)、心臓(高血圧性心臓病、心不全)、腎臓(腎不全)、動脈(解離性動脈瘤)に合併症をきたすのです。又これらの重要な動脈では高血圧にさらされることによって血管内にある内皮細胞と言う重要な細胞を障害する結果、動脈硬化(粥状硬化)の原因となります。その結果、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症等の疾患もきたす事となります。 夫々病名だけでは聞いたことがあってもどういうものかよく分からないと思いますので、夫々の合併症について説明を加えたいと思います。 ああ、しかしもう紙面が無くなってしまいました。 残念ですが続きは次回にお話しする事とします。

高血圧の話し ~その4~
合併症について②
合併症の続きです。合併症をだらだらと並べてみてもどんなものか分かりにくいと思いますので少し詳しく、出来るだけ分かりやすくお話したいと思います。 まず高血圧と言って第一に出てくるのが脳血管障害です。 日本では高血圧と脳疾患の関係が特に高いと言われます。 脳血管障害には大きく分けて脳の中に出血を起こす脳出血と脳の血管が詰まって脳が駄目になる脳梗塞があります。 まず脳出血ですが、長年高血圧にさらされると、脳の中の小さな血管に小さな瘤を作ります。 これが破れると出血を起こします。出血の場合は出血した血液から脳が圧迫されて症状が出現しますので出現の量と脳のどの場所で出血したかによって、全く症状が無いものからあっという間に亡くなってしまうもの迄で様々です。

次に脳梗塞ですが小さな瘤が破れずに中に血の固まり(血栓)がつまるとその先に血液が流れなくなり、つまった先の脳が駄目になってしまいます(小さな梗塞)。これはラクナ梗塞と呼ばれます。この場合は全く症状が無い事が多く、頭のCTやMRIという検査をして初めて『小さな梗塞がありますが心配いりませ。』と言われたりします。確かに2~3個程度なら通常心配いりませんが、この小さな梗塞があちこちに多発性にできると多発性脳梗塞と呼ばれ、痴呆の原因となる事があります。所謂血管性痴呆と言うやつです。
一方、動脈硬化(粥上硬化)が原因と考えられる脳梗塞は比較的な大きな動脈に起こり、動脈硬化で狭くなった血管に突然血栓がつまり、突然意識が無くなったり、片方の手足が動かなくなったり、言葉が出なくなったりします。これが脳血栓です。血栓がつまっても直ぐに流れれば症状は一時的で回復しますが、つまったままで流れないと症状が固定するか又は進行して、結局脳梗塞になります。これは最初説明したラクナ梗塞よりも太い血管で起こり、ダメになる脳も広範囲となる為に症状も重篤で、重症な場合は寝たきりとなったり、命も危ない状況となります。 脳梗塞の場合は手術の適応となる事は殆どありませんが出血の場合は手術の適応となる事が多く、早急に脳外科へ転送する事となりますいずれにしても症状だけでは梗塞か出血かの判断が難しく、頭のCTが出来る施設へ早めに受診する事が大切です。 脳血管障害についてお話しましたが、お分かり頂けたでしょうか?脳疾患だけでもこれだけ紙面を使ってしまいました。次回は心臓、腎臓等の合併症についてお話します。
高血圧の話し ~その7~ 治療について① 今回からはしよいよ治療についてお話ししましょう。 さて高血圧の治療といっても薬を飲むばかりが治療ではありません。 今話題になっている生活習慣病と言うのを聞いた事があると思いますが、今迄は成人病と言われていたものです。 高血圧、高脂血症、糖尿病、虚血性心疾患、痛風、肥満、動脈硬化等には生活の習慣が大いに関わっていると言う事です。つまり生活習慣を正常に戻す事で可成りの部分改善されると考えられています。 では生活習慣が異常とはどういう事でしょいうか? 昔と今では死亡原因のパターンが可也変わってきました。昔は断トツで脳卒中で死亡する人が多かったのです。しかし今では癌や虚血性心臓病で死亡する人が増えて立場が逆転してしまいました。

高血圧の話し ~その8~ 治療について② 今回は食事療法についてお話しましょう。 前回は、高血圧の治療には塩分を制限する事が大事ですよと言うお話をしました。実際、塩分の取り過ぎが高血圧を招くと言う事はテレビや雑誌でも盛んに言われており、皆さんも御承知の事と思います。だからといって知っているから実行している訳ではありません。皆さんが結構塩分を取られているんですよね。 まず一番重要なのは塩分制限です。ではなぜ塩分を制限する必要があるのでしょうか? 塩分を取り過ぎても健康な人は余った塩分を腎臓からきちんと外に出す事が出来ます。しかしそうでない人(高血圧、腎臓病、心臓病やお年寄り)は余分な塩分を薄める方向に体が働くんですね。その為に水分を余計に再吸収します。その結果、尿の量が減ったり、むくみが出たり、体を回る血液も量が増えて心臓に負担がかかったり、血圧が上昇したりするんですね。特に塩分に敏感な人(食塩感受性タイプ)は塩分を取り過ぎれば一目瞭然です。じゃあ塩分に敏感でない人(食塩非感受性タイプ)は塩分を取って良いか、そうではありません。食塩非感受性タイプの人も塩分を控える事により降圧薬を減量出来ます。皆さんも沢山の薬を飲みたくないでしょう。
 普通の人は1日10g以上の塩分を取っていると考えられます。しかし高血圧があれば1日7g以下に抑える必要があります。(アメリカでは5g以下ですよ)10g以上取っていた人が急に7g以下と言われても『とても出来ません!』と言う声が聞こえそうですが何事も慣れの問題です。ただ急に減らすよりは徐々に減らしていった方が良いと思います。又コショーやトウガラシや酢で代用するのも一つの方法です。 塩分制限以外にどんな事に気をつければ良いでしょうか? 前回お話した生活習慣病と言うのを覚えていると思います。 特に肥満を伴っている場合は体重をコントロールする事で血圧が下がる事が分かっています。つまり1日の摂取カロリーを制限する事が重要となります。糖尿病と同じですね。 どの程度制限するかは肥満の程度によります。 それ以外ではなるべく摂取するように言われているのがカリウム(K)とマグネシウム(Mg)でしょうか。 Kは野菜や果物に豊富に含まれており、塩分に対抗して血圧を下げる働きがある事が分かっています。但し腎臓の機能が悪い場合は逆にKを制限しないといけません。
又Mgは血管を拡張させる働きがあり、血圧を下げる事が分かっています。納豆、ごま、ひじき等に多く含まれています。
次回は運動療法について少し詳しくお話ししましょう。 |