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タイトル コレステロールの合成とスタチン系の薬 
コメント 処方箋で出された薬の効能に関して説明用の資料として準備しました(プレゼンもあります)

体内でのコレステロールの合成とスタチン系の薬剤に関して

コレステロールは、1日約0.3gが食事から吸収され、約1.5~2gが体内の主に肝臓で合成されます。肝臓は代謝を行う臓器で色々な代謝酵素の存在するところです。また新たな必要な体内物質も合成しています。

ご飯や麺類などの炭水化物、肉や魚や大豆等の蛋白質に含まれるアミノ酸や、脂肪や油脂などの脂質の脂肪酸が代謝され酢酸(アセチル-CoA)が生成されます。このアセチル-CoA から肝臓でのHMG-CoA(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA:-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A)還元酵素の作用でメバロン酸(mevalonate)が合成されます。

  メバロン酸からコレステロールが合成されます。肝臓で合成されたコレステロールは水に溶けにくいのでリポ蛋白という球状の物質に変化して血液中に溶け込んでいます。リポ蛋白(VLDL、LDL)として血液中を介して末梢組織に送られます。コレステロールを多く含む食餌を摂取すると、肝臓で合成される内因性コレステロール量は減少しますが完全に抑制されることはありません。

 コレステロール合成は摂食時には肝臓と(小)腸で行われ、空腹時には肝臓で行われます。1日約2gのコレステロールを胆汁中から腸管内へ排泄しますがこの腸管内に排泄されたコレステロールは、大部分は、再び、腸粘膜から吸収される(腸肝循環)ので、実際には、1日0.4gのコレステロールが、体外に排泄されると言われます。

  HMG-CoA還元酵素阻害剤は、肝臓で、HMG-CoA還元酵素を阻害し、肝臓でのコレステロールの合成を抑制する。その結果、肝臓のLDL受容体の発現が高まり、血液中のコレステロールが低下する:血中の総コレステロール値やLDL-コレステロール値が低下し、HDL-コレステロール値や、中性脂肪値(トリグリセリド値)や、アポ蛋白B分泌量(アポB分泌量)も低下します。

  HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)を、コレステロール値が高いウサギに投与すると、動脈硬化症の進行が抑制されます。HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)を、動脈硬化症の患者に1年間投与すると、一旦、形成された動脈硬化巣が、平均2割、退縮します。HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)は、血流(血行)を改善したり炎症を抑制する作用(抗炎症作用)も有することが知られています。

  高脂血症になると、血液凝固と炎症が、亢進し、血管内皮細胞に炎症が起こると考えられています。スタチンは、(炎症を起こした)血管内皮細胞に、白血球が付着(接着)するのを、抑制し、動脈硬化症の進展を抑制します。

 スタチン系薬剤の使用上の注意

 ・スタチンは、肝障害や腎障害のある患者には、慎重に投与

   肝障害患者、アルコール中毒患者は、横紋筋融解症が現れ易い。

  腎障害患者や、腎障害の既往のある患者は、横紋筋融解症が現れ易い

  ・スタチンは、肝臓で薬物代謝酵素により代謝されるので、薬剤との併用に気を付ける。マクロライド系抗生剤のエリスロマイシン(EM)や、クラリスロマイシン(CAM)は、スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害剤)と、代謝や胆汁中への排泄が競合し、スタチンの血漿中濃度を上昇させ、スタチンの副作用(横紋筋融解症など)を増加させるおそれがある。

 ・横紋筋融解症では、筋肉痛、脱力感、CPK上昇(CK上昇)、血中や尿中のミオグロビン上昇が見られる。急性腎不全などの腎障害が現れることもある。 

 ・劇症肝炎、肝炎、肝機能障害、黄疸が現れることがある。

 血液検査(肝機能検査)を定期的に行い、異常値が見られたら、投与を中止する。

 肝機能検査(γ-GTP、ALT、ASTなどの測定)は、スタチン系薬剤(HMG-CoA酵素阻害剤)の投与・増量開始12週間後は、月1回行う。それ以降も定期的(半年に1回など)に、肝機能検査を行う。

  ・時に血小板減少性紫斑病、高血糖・糖尿病が現れることもある。

 ☆5年に1度改定される厚生労働省『日本人の食事摂取基準』ですが、2015年版で、コレステロールの摂取制限が撤廃されました。理由は…     「目標量を設定するのに科学的根拠が不十分」食事から摂取するコレステロールと、血液中のコレステロールの因果関係は証明できなかったそうです。 

 ということで、コレステロールの多い食事を少々摂ったからと言って血液中のコレステロールが急減に上がるものでもなく、体内のコレステロール合成能が食事からの過剰なコレステロール摂取によりうまく合成が調整されるというものです。卵を1日に2個、3個摂ったからといってそんなに気にすることはないようです。   

https://swp.shiranui.info/swp/presen_play.php?KEY=s594352747a9b8777528030

  (イラストは塩野義製薬のHpより利用させていただきました)